コンサルタントへの転職 中堅SIer/ITコンサルタント⇒コンサルティングファーム/ビジネスコンサルタント

- 30歳 男性
- 中堅SIer/ITコンサルタント
コンサルティングファーム/ビジネスコンサルタント - 800万円
600万円
Aさんの転職活動は最終段階に入っていました。
今日は、第一希望であるX社との条件提示を兼ねた最終面接へ行っているはず。と思っていたところにAさんからの電話が入りました。
「いま、面接が終わりました。少し相談に乗って欲しいのですが、これから伺っても良いですか?」
「アレッ、終わる時間が少し早いな」と考えながら到着を待っているところに、今度はX社の人事マネージャーからの電話です。
X社人事マネージャー:「Aさんの件ですが、弊社としては是非お迎いしたいと思うのですが...」
(やった~。でも、...て何だろう。)
「ご提示した年収がご本人の希望より下がってしまい、ご本人が非常にショックを受けられたようで...」
私:「いったい、どう言うことですか?」
X社人事マネージャー:「Aさんには、当初よりシニアマネージャーをお願いしようと考えていました。しかし、今の時点ではどうしても社内のバランスのため、ひとつ下のポジションのマネージャーでのご入社をお願いせざるを得なくなりました。このため、いままでお話しをしていた想定のご年収より、かなり下がることになってしまって...」
私:「それは、もう決定事項ですか? 再度、御社の中で検討していただくことは出来ないのですか?」
X社人事マネージャー:「申し訳ありませんが、すでに社内では決定事項です。
Aさんにも内定書をお渡しました。でも、Aさんなら必ず入社後に良い評価を受けると思います。
来年度の評価でシニアマネージャーへの昇進もあり得ると思います。そうすれば、ご本人の希望の年収も出ます。
Aさんは将来の私どもの会社の中核になっていただける方だと思っています。現場も人事も、なんとかAさんにご入社いただきたいのです。」
私:「御社のお考えは判りましたが...」
X社人事マネージャー:「Aさんは、アクシスさんと相談すると言われました。なんとか、説得していただけませんか?お願いします。」
のんびりと面接結果を待っていたのが、一転して臨戦体制です。実は、内定提示年収が希望を少し下回るであろうことは、事前に予測されていました。
Aさんは数年のキャリアを持ったITコンサルタントです。もっとビジネスを意識した上流の業務をしたい強い希望を持っていました。
そのようなAさんにとって、X社のビジネスコンサルティング部の求人は今までの経験の一部を使いながら新しい希望の業務に進むことが出来る、まさにうってつけの案件です。
しかし、厳密な意味ではキャリアチェンジになり、100%即戦力の評価を受けることは難しいことから、内定が出た場合も金額面では希望が満たされないであろうことは、既に考えられていたのです。
そして、そのことはAさん本人が一番判っていて、「それでも、是非X社に入りたいんです。僕は今、X社でビジネスコンサルティングの仕事をやりたいんです。お金の問題じゃない。」と、私にもずっと話してくれていたのに・・・。
Aさんが会社に着きました。応接室のAさんは、普段の陽気な様子は全く影を潜め、落ち込んでいるのが一目でわかるような状況です。
テーブルの上には、X社の内定書が置かれています。「Aさん、お疲れ様でした。どうでしたか。」「内定をいただきました。でも、年収が...。」
内定書を見ると、現在年収から約200万円以上の大幅ダウンでした。これには私もショック。
今回はキャリアチェンジになるため、多少のダウンは覚悟していたのですが、まさか200万円以上とは...。
言葉が見つからない私へAさんが今日の面接の様子を話してくれます。「X社でお会いした方々は現場の方も人事の方も皆さん良い方々でした。
僕はあのような環境で、本当に自分のやりたい仕事に没頭したい。でも、先方の社内規定もあり、どうしてもシニアマネージャーからのスタートは難しいと言われました。
それで、この提示年収になったとのことです。僕はポジションにはこだわりません。マネージャーでもシニアマネージャーでもどちらでもいいんです。
でも、この内定書を見たときは恥ずかしい話ですが思わず涙が出てしまいました。今までの自分や自分のやって来たことを否定されたような気がしたんです。
先方の人事の方の前で不覚でしたが、どうしようもありませんでした。」目の周りが赤いのはそのためか、と思いつつ、落ち込んでいるAさんに何と声をかけてよいか判らない。
普段だったら内定おめでとう!と握手をした後に、入社後のシミュレーションをはじめるところですが、とてもそんな雰囲気ではありません。
2人とも黙ったまま、テーブルの上に置かれた内定書を凝視している何分かが過ぎた後、Aさんが口を開きました。
「年収の面では確かに不満です。でも、僕はX社に入社しようと思います。やっぱり、今の仕事ではなく、ビジネスコンサルティングがやりたいんです。」
「いいんですか?年収だって転職をする上で大事なファクターですよ。無理にX社に入社しないで、もう一度 他の会社を探しという手段だってありますよ。」
「確かに年収は大事です。でも、今回の転職がキャリアチェンジになることは判っていました。経験が活かせるキャリアアップなら、次のチャンスがあるかも知れません。でも、キャリアチェンジだと本当に次のチャンスがあるのか判りません。僕にとっては、後から取替えせるお金よりもこのチャンスを逃す訳には行きません。それにX社の人事マネジャーや直接上司になるマネージャーは、僕が実績を残せば早い時期に昇進も昇格も出来ると言ってくれました。それに賭けます。」
顔色も良くなり、本来の活発さを取り戻したAさんと入社までのスケジュールの打合せを終わり、エレベータの前で別れるとき、Aさんは私(多分、申し訳けなさそうな顔をしていたのでしょう)に、「大丈夫ですよ。すぐ取り戻して見せます。」と逆に笑いかけて来ました。
「本当に、これで良かったんだろうか。」私は素直に喜ぶことが出来ずにAさんを見送りました。それから、1年半ほど経ったある日、Aさんからの電話をいただきました。
「お世話になりましたX社のAです。元気でやっています。仕事で、御社の近くまで来たのですが、少し寄っても良いですか?」現れたAさんは、昔同様の活発さプラス自信に満ち溢れたビジネスコンサルタントになっていました。
「こんど本を執筆しました。一冊持ってきたので読んで下さい。今はすごく充実しています。やりたかったコンサティングの仕事の他に、本を書いたり、講演もしています。」
「おかげ様で、今年シニアマネージャーになりました。年収も入社時の希望額まで回復しました。」引っ掛かっていた年収の状況を聞けて、ホッ。
「転職って、自分の夢を実現するための手段ですね。目先のお金のことを考えていたら多分転職は出来なかったと思います。自分の夢をかなえるために僕は自分自身に賭けたんです。僕の転職は大成功だったと思います。」そうだ、転職は夢を実現する手段だったんだ。
普段自分がお会いする方々に話しているはずの言葉をAさんから聞いて、一年半持っていた肩の重みが取れたような気がしました。
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